2006年10月26日

◆猿渡瞳さんの心を今こそ

最近の新聞には、教師が生徒をいじめたり、親がわが子を虐待したりという、目も耳も覆いたくなる、信じられない事件が、連日報道されています。

いずれも「大人が子どもをいじめる」という点で共通しています。

フランスの文学者アンドレ・マルローはこう言いました。

「不幸な子どもたちがいる限りは、進歩などという言葉はなんの意味ももたないであろう」

また、ロシアの文豪ドストエフスキーもこう言いました。

「もしも世界が、人でなしによる無邪気な子どもに対する迫害を許すなら、私は未来の調和の入場券をお返しする」

一人でも悲しい思いをする子どもがいる限り、世界は平和だなんていえない、という大変深い言葉です。私もそう思っております。

このような事件を目にするたびに、私は、故・猿渡瞳さんが遺した「命見つめて」という作文を思い起こさずにはいられませんでした。この作文の心を、私たち大人が真剣に受け止めて、より良い社会になっていくように、自分ができることをはじめていかないといけないのではないかと思う次第です。

以下、その作文を掲載させていただきます。

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■故猿渡さんの作文「命を見つめて」(全文)

 みなさん、みなさんは本当の幸せって何だと思いますか。実は、幸せが私たちの一番身近にあることを病気になったおかげで知ることができました。それは、地位でも、名誉でも、お金でもなく「今、生きている」ということなんです。

 私は小学六年生の時に骨肉腫という骨のガンが発見され、約一年半に及ぶ闘病生活を送りました。この時医者に、病気に負ければ命がないと言われ、右足も太ももから切断しなければならないと厳しい宣告を受けました。初めは、とてもショックでしたが、必ず勝ってみせると決意し希望だけを胸に真っ向から病気と闘ってきました。その結果、病気に打ち勝ち右足も手術はしましたが残すことができたのです。
 
 しかし、この闘病生活の間に一緒に病気と闘ってきた十五人の大切な仲間が次から次に亡くなっていきました。小さな赤ちゃんから、おじちゃんおばちゃんまで年齢も病気もさまざまです。厳しい治療とあらゆる検査の連続で心も体もボロボロになりながら、私たちは生き続けるために必死に闘ってきました。

 しかし、あまりにも現実は厳しく、みんな一瞬にして亡くなっていかれ、生き続けることがこれほど困難で、これほど偉大なものかということを思い知らされました。みんないつの日か、元気になっている自分を思い描きながら、どんなに苦しくても目標に向かって明るく元気にがんばっていました。
 
 それなのに生き続けることができなくて、どれほど悔しかったことでしょう。私がはっきり感じたのは、病気と闘っている人たちが誰よりも一番輝いていたということです。そして健康な体で学校に通ったり、家族や友達とあたり前のように毎日を過ごせるということが、どれほど幸せなことかということです。
 
 たとえ、どんなに困難な壁にぶつかって悩んだり、苦しんだりしたとしても命さえあれば必ず前に進んで行けるんです。生きたくても生きられなかったたくさんの仲間が命をかけて教えてくれた大切なメッセージを、世界中の人々に伝えていくことが私の使命だと思っています。

 今の世の中、人と人が殺し合う戦争や、平気で人の命を奪う事件、そしていじめを苦にした自殺など、悲しいニュースを見る度に怒りの気持ちでいっぱいになります。一体どれだけの人がそれらのニュースに対して真剣に向き合っているのでしょうか。  

 私の大好きな詩人の言葉の中に「今の社会のほとんどの問題で悪に対して『自分には関係ない』と言う人が多くなっている。自分の身にふりかからない限り見て見ぬふりをする。それが実は、悪を応援することになる。私には関係ないというのは楽かもしれないが、一番人間をダメにさせていく。自分の人間らしさが削られどんどん消えていってしまう。それを自覚しないと悪を平気で許す無気力な人間になってしまう」と書いてありました。  

 本当にその通りだと思います。どんなに小さな悪に対しても、決して許してはいけないのです。そこから悪がエスカレートしていくのです。今の現実がそれです。命を軽く考えている人たちに、病気と闘っている人たちの姿を見てもらいたいです。そしてどれだけ命が尊いかということを知ってもらいたいです。  

 みなさん、私たち人間はいつどうなるかなんて誰にも分からないんです。だからこそ、一日一日がとても大切なんです。病気になったおかげで生きていく上で一番大切なことを知ることができました。今では心から病気に感謝しています。私は自分の使命を果たすため、亡くなったみんなの分まで精いっぱい生きていきます。みなさんも、今生きていることに感謝して悔いのない人生を送ってください。

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この作文は、がんと闘い、2004年9月に13歳で亡くなった福岡県大牟田市の猿渡瞳さんが、死の約2カ月前につづった作文です。「24時間テレビ」でも取り上げられ、また、今年8月26日にはFBS福岡放送で「瞳スーパーデラックス」という番組も放送されました。同じ名前の本も西日本新聞社から発刊されています。

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この記事へのコメント
これを読んでくれた皆さん
私の心から皆の心に送った、このメッセージ。
私が一番一番伝えたかったことは「命の形」なのです。
自分は命を軽く考えていて、自分の命を自分で奪ったとします。
すると、残された家族や友人はどうなるのでしょう??
そこの部分が今の私たちの世代の人に欠けていると思います。
もう、皆さんの前で顔を見て伝えたいことを話せないけれど、
私が残したこの作文、そして私が生前伝えてきたことを聞いて、私が何のために生まれてきたのか?その意味、伝えたいこと事をしっかり理解して頂けたなら、今の私にこれほど嬉しいことはありません。
皆さんが精一杯生きている様子を少し上から、眺めていきます。
2007. 3.4   猿渡 瞳
Posted by 瞳 at 2007年03月04日 18:22
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